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旅立ってから、どれだけ走り回っていたんだろう?
あるときはシエナにいたり。あるときはピサにいたり。
サン・ジミニャーノの高い塔を見たのも、かすかに覚えている・・・。

気がつけばアントニオは、ヴェニスの町に到着していた。
何日走っていたのか、何を探しているのかもわからなくなるほど走っていた。
疲れきって、おなかもペコペコ。

“今日はここで寝よう”
水上バスが通り過ぎる入江、リアルト橋のたもとでアントニオは眠りについた。

夢うつつの中で、どこからか淹れたてのコーヒーの香りがした。
いや、それはただのコーヒーじゃない。
その香りは、アントニオが人間の捨てたカップから味見した、レギュラーコーヒーよりも、
もっともっと幸せな香り。

その香りがどこからくるのか見つけたくて、目を開けた。
「!!!」
驚いたことに、そこにあったのは、石畳の上でつぶれて箱からこぼれ出ている湿ったケーキ。

アントニオは、右足でそお~っと箱を押してみる。
彼のコントロールの良い足と反射神経は、ローマ中の野良猫たちの間で有名だった。
彼の足は、人間がもつ長い豆みたいなもののように、ふるまうことができる。
それをなんて呼ぶんだっけ? あっ!そうだ!指だ!
彼の足は、人間の指と同じくらい役に立つと言われていた。

アントニオは右足についたそのケーキをなめてみた。
「え~!!なんだ、この味は!?」

口の中でとろけるまろやかなクリームと香り高いコーヒーの味。
それは、とてつもなく美味しく、彼の人生の中で始めて出会った最高の味。
一口の湿ったケーキでこんなにも幸せな気分になるなんて!

アントニオが感動して、ケーキを夢中で食べ始めた瞬間、
彼の目に前に大きな茶色い影が映った。
食べるのを止めて顔を上げると、そこには、彼が今まで見た事のない
とっても美しい猫がいた。魅力的な柔らかく長い髪、整った顔立ち。

“なんてキレイな娘(猫)”

「ミャー」アントニオは言った。“この猫がイタリア語もわかるといいな”

「それはティラミスって言うのよ。」キレイな猫が答えた。
「エスプレッソコーヒーとクリームで作られたのよ。私を元気にしてって言う意味が込められてるケーキよ。」

“ティラミス...これだ!”

アントニオは思った。

“ついに人生の目的が見つかった。”
“この美味しいティラミスを、みんなに届けよう!そしてみんなを元気にしよう”。

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