アントニオ 旅に出る
アントニオは、ローマの野良猫。誕生日は2月14日。
冬の寒い日、古いイタリアンレストランの裏で生まれました。
みんながバレンタインを祝う中、彼はひとりぼっちで石の上で横たわり、寒くておなかもぺこぺこでした。
彼は パンテオンの裏手にある、美味しいエスプレッソのお店“サンテウスタキオ カフェ”
のすぐ近くで育ちました。
夏の午後は、パンテオンのひんやりした大理石をベッドにしてお昼寝。
のんびりと野良猫ライフを満喫していました。
ところが、彼が4歳、 猫年齢で32歳になったある日、突然、旅に出ることを決意。
人生の目的を探しに、ふらふらと旅立ったのです。
アントニオにとって、人ごみをすり抜けて歩くのはお手のもの。
彼はローマの街に漂う美味しい香りを楽しみながら、鼻の向くまま気の向くまま、
歩くのが大好きでした。
中でもアントニオが一番気に入っていたのは、世界でも有名なバニラメレンゲジェラートと
マキアートの香り。
ただ時々、香りにつられて歩いていると、アントニオが一番嫌いな場所「ナヴォーナ広場」
にたどりついてしまうことがありました。
なんで嫌いかって?
それは、ハトの大群がいるから。
ナヴォーナ広場と 3つの噴水のあたりは、ハトだらけ。
よりによって今夜は、気が付いたらここにいた。
「Mamm mia (なんてこった!!!)」
案の定、ハトがアントニオにちょっかいを出してきた。
「ぎゃ~~~」
アントニオは、平常心を奪われ取り乱してしまった。
闘争心むきだしで、アントニオに襲い掛かるハト。
「うりゃ~!負けてたまるか!」
ついにアントニオの狩猟本能が目を覚ました。
「僕にだって、抜群の安定感と、気高い猫のプライドがあるんだ!」
いつもはやらっれぱなしだけど、今夜のアントニオは、いつもとひと味違う。
栗色のハトと差し向かいになり、追っかけまわした。